それは只の夢だった
酷く脈絡の無い
周りは白くて
私は焦っている
 
してはいけないことをしてしまった
 
それだけが頭を占めている
逃げなければいけない
当ても無くひたすら走る
その時
何処からか声が聞こえてきた
 
このままだと自殺か強制入院だ
 
その声は笑いを含んでいて
わけもわからず私は怯える
逃げなければいけない
でも、どこに?
逃げ道はふたつ
声が囁くふたつだけ
私の胸は押し潰されそうになる
私は


目を開くと天井が見えた。白い。
起き上がって周りを見回すと、部屋は白で統一されていた。
白が目に痛くて、未だに夢の中にいる様な気がする。
頭を強く振り、今見たばかりの夢を思い出す。私は何を焦っていたのだろうか。
何か、取り返しのつかないことをしてしまった
只それだけが心を占めていた。私は一体、何をしたのだろう。
暫く考えていたが、馬鹿馬鹿しくなってきたのでやめた。
夢の中での行動などを気にしてどうしようと言うのか。
それにしても、周りの白さが気になる。
ここは私の部屋のはずだが、どこかおかしい。
そう、何故か私はここが自分の部屋だと確信している。
白い白い部屋。そういえばここには窓が無い。
私は無性に外の空気が吸いたくなった。
扉を開ける。
長い廊下が奥へと続いている。
おかしい。私の部屋の前にこんなに長い廊下があっただろうか。
仕方が無く進んでいく。白い。全てが白く塗りつぶされていて、境界がはっきりとしない。
廊下は長く、何処までも続いている。
目がちかちかする。
ここは何処なのだろう。
白い。白過ぎる。
このまま白に埋もれて発狂するのではないか。
そう思ったとき、突然、遥か前方に空が見えた。
私は走り出す。
あともう少しというところで、何かが心をよぎった。
それは本当に微かなものだったが、ぽつりと零したインクのように、私の思考を侵した。
私は立ち止まる。妙に心臓が高鳴る。考えてはいけない。もう出口はすぐそこだ。
しかし、私はその「何か」が何なのか考えてしまう。不安が急激に高まる。
私は、ゆっくりと、それを思い出した。

してはいけないことをしてしまった

私は


気付くと目の前に白いコンクリートが迫ってきていた
白い。白い白い白い白い白い・・・・・
視界が白に埋め尽くされる
白が迫ってくる


それは只の夢だった